加齢性黄斑変性患者にiPS細胞の臨床研究開始 

iPS細胞の臨床研究がいよいよ日本で始まるようです。
iPS細胞で作った網膜色素上皮細胞を加齢黄斑変性患者らに移植する臨床研究を2013年度にも開始というニュースです。
◆神戸新聞「 iPS細胞、神戸で臨床研究 2013年度にも」

今回の臨床研究は、5人程度の患者に対して、患者自身のiPS細胞から作製した網膜色素上皮細胞を移植し、有効性や安全性などを確認するものです。
3年後には一般の治療として承認を受けるための治験を始めたいとしています。


■網膜色素上皮細胞のはたらき
網膜色素上皮細胞は、視細胞を維持したり栄養を送るという働きをしています。
網膜色素上皮細胞は光を受け取る細胞ではないため、移植しても見えるようになるというわけではありません。
しかし網膜色素上皮細胞が障害される病気の進行を止めたり遅らせる効果があると考えられています。


■加齢黄斑変性と網膜色素上皮細胞の関係
黄斑変性は網膜の黄斑部が傷む病気なのに、網膜色素上皮細胞を移植するのはなぜでしょう?
黄斑部が傷む原因の一つとして、新生血管ができることがあります。
新生血管のできる課程は現在次のように考えられています。
網膜細胞が新陳代謝を繰り返しているうちに老廃物が出る。
 ↓
老廃物は、通常は網膜と脈絡膜の間にある網膜色素上皮内で消化されて無くなるが、網膜色素上皮の働きが低下すると、老廃物がたまる。
 ↓
本来そこにあってはいけない老廃物によって慢性の弱い炎症反応が続く。
 ↓
炎症を鎮めるために化学伝達物質が発生。
 ↓
化学伝達物質は炎症を治そうとして血管内皮増殖因子(VEGF)を放出。
 ↓
脈絡膜から新生血管が生えてくる。
 ↓
新生血管が網膜色素上皮に侵入してくると、増殖して液漏れが激しくなり、
黄斑の機能が低下していく。

(目と健康シリーズno.7[特集:加齢黄斑変性]より)


網膜色素上皮細胞が元気であれば、老廃物もたまらず、血管もできにくいという理屈のようですね。
この方法なら、萎縮型(ドライタイプ)の黄斑変性患者も病気の進行を止める効果が期待できるかもしれません。

PDT(光線力学的療法)やTTT(経瞳孔温熱療法)は、できてしまった血管を焼く方法、
アバスチンやルセンティスは 血管内皮増殖因子(VEGF)を薬で抑えて新生血管の発育を抑制する方法でした。
網膜色素上皮細胞移植は、血管ができる原因になる老廃物の発生自体を抑える方法でしょうか。
次第に原因を遡って断つ方法に変化しているように見えますね。

この方法がうまくいったとしても、残念ながらすでに痛んでしまった視細胞を
もとに戻すことはまだできません。

理化学研究所 視覚再生グループのサイト
を見ると、網膜色素上皮細胞移植の後には、視細胞を移植する方法を進めたいとしています。
網膜再生治療が完成するには「数十年」かかるそうで、まだまだ道程は遠いですが
「千里の道も一歩から」です。
事業仕分けで大変かと思いますが、理研の皆様には期待しています。


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